再犯防止をめざす刑務所の挑戦

再犯防止をめざす刑務所の挑戦 

手塚文哉著(現代人文社)

美祢社会復帰促進センター、島根あさひ社会復帰促進センター、府中刑務所長等を歴任し、平成30年3月に定年退官した著者が、近年の刑事施設の運営や受刑者処遇の取組み等について具体的に紹介する書。PFI刑務所の設置・運営の仕組みや課題等も要領よく紹介していますが、本書の大きな特徴は、受刑者の改善指導への取組みに焦点を当て、受刑者への働きかけ、改善指導、多種多様なプログラム、職業訓練等について、失敗事例等も含め、具体的に取り上げている点にあります。本書には「美祢・島根あさひ社会復帰促進センター等の取組み」という副題が添えられていますが、両PFI施設だけでなく、府中刑務所における取組みや、刑事施設全体を俯瞰した受刑者処遇にも触れており、その上で、再犯防止施策の現状や課題について論じています。コレワーク等の最近の取組みも紹介しながら、さらなる取組みを進めるための課題等も端的に指摘しているので、問題点を把握するためにも有用です。親しみやすい語り口で大変読みやすく書かれていますが、盲導犬プログラムやヤギ飼育をはじめ、著者の動物愛が随所に散りばめられているのも大変楽しく、著者の温かい人柄や矯正に対する深い愛情も伝わってきます。矯正関係者、刑事司法関係者以外にも幅広く手に取っていただきたい好著です。(令和2年5月30日発行 2,000円+税)