都市問題 2021年2月号

㈶後藤・安田記念東京都市研究所発行の月刊誌「都市問題」2021年2月号は、特集1で「再犯防止と出所者支援」を取り上げ、様々な観点から6つの論稿を掲載しています。様々な議論のある論点もありますが、適宜ご参照ください。一部を紹介しますと、伊豆丸氏の論稿は、今般のコロナ禍が生きずらさを抱えた人たちが陥る”クレバス”を浮き彫りにしているとの視点から、経験された具体例を紹介し、既成の枠組みを超えた支援の必要を指摘しています。中島氏の論稿は、少年院が担うべき機能を3つに整理し、これを軸として少年院における指導や社会復帰支援の具体的内容、留意事項、課題等について述べています。三宅氏は、受刑者等専用求人誌「Chancs!!」を発刊し、出所者等の就労の実現に大きな役割を果たしていますが、「Chance!!」発刊の経緯や発刊後の採用実績等を紹介し、成功例や失敗例を通して、採用に当たっての留意点や定着率を高めるための留意点などを紹介しています。

塀の中のジャンヌ・ダルク

塀の中のジャンヌ・ダルク

Paix❷ プリズンコンサート五〇〇回への軌跡

(鹿砦社編集部)

全国の矯正施設でコンサートを開いている女性ユニット「Paix❷」(ペペ)は平成12年(2000年)から矯正施設でのコンサートを始め、令和2年(2020年)1月、横浜刑務所で500回目のプリズン・コンサートを行いました。本書は、20年にわたるその素晴らしい活動を記録し顕彰する記録集で、Paix❷の活動を応援している鹿砦社からの記念出版ということです。500回目のコンサートの密着レポート、お好み焼きチェーンの千房会長とPaix❷の座談会、片山マネージャーを含めた3人へのインタヴュー、20年の活動記録とコンサートを行った施設リスト、3人からの寄稿に、各地での写真など、大変充実した内容です。ワゴン車に機材を積み込んで全国をめぐり、アクシデントにもめげず、手作りのコンサートで入所者を励まし続けている姿には本当に頭が下がります。刑事政策に関わる方の多くは、Paix❷の活動をある程度ご存知だと思いますが、本書を読みと、その大きな功績に圧倒されます。現在はコロナ禍で活動も制約が多と思いますが、コロナ収束後の活動再開を期待しています。(令和2年6月20日発行 1,400円+税)

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再犯防止をめざす刑務所の挑戦

再犯防止をめざす刑務所の挑戦 

手塚文哉著(現代人文社)

美祢社会復帰促進センター、島根あさひ社会復帰促進センター、府中刑務所長等を歴任し、平成30年3月に定年退官した著者が、近年の刑事施設の運営や受刑者処遇の取組み等について具体的に紹介する書。PFI刑務所の設置・運営の仕組みや課題等も要領よく紹介していますが、本書の大きな特徴は、受刑者の改善指導への取組みに焦点を当て、受刑者への働きかけ、改善指導、多種多様なプログラム、職業訓練等について、失敗事例等も含め、具体的に取り上げている点にあります。本書には「美祢・島根あさひ社会復帰促進センター等の取組み」という副題が添えられていますが、両PFI施設だけでなく、府中刑務所における取組みや、刑事施設全体を俯瞰した受刑者処遇にも触れており、その上で、再犯防止施策の現状や課題について論じています。コレワーク等の最近の取組みも紹介しながら、さらなる取組みを進めるための課題等も端的に指摘しているので、問題点を把握するためにも有用です。親しみやすい語り口で大変読みやすく書かれていますが、盲導犬プログラムやヤギ飼育をはじめ、著者の動物愛が随所に散りばめられているのも大変楽しく、著者の温かい人柄や矯正に対する深い愛情も伝わってきます。矯正関係者、刑事司法関係者以外にも幅広く手に取っていただきたい好著です。(令和2年5月30日発行 2,000円+税)